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敗戦国将兵として言えなかった話 [社会]

この話は私がブログに、中国に侵略戦争を旧日本がした、という事を書いたとか、以前に聞いていたとか言う話ではない。

NHK朝ドラの”まっさん”で登場人物の一人が招集される、そのストーリーを見た直後に母親が、語った話である。

前置きが長いが、子供の時代から私が色々なことに関心があって、特に戦争というもの、何故、理不尽な事が起こるのか、そういう事を私が義憤を感じる、そういう子供であったために、母親が、戦前、戦中、戦後の私の知らない時代についてよく話をしてくれていた。

ほとんどは母の実体験の話だったので、こういう中には嘘がない。登場人物が同様の話を別の機会にしてくれるのでそれが分かった。ただ、それが全てだとは言えないので、戦争の一面として私はそれを記憶の中にインプットしていた、という事である。

ところが、今日、母親が話し始めた内容は、本当に初耳であった。

私の父親も招集はされている。父親は8人兄弟で、若い時から工場を任されるという任を負った伯父と肺を痛めた叔父を除いて男兄弟は招集され、長兄はシベリア抑留まで体験している。別の兄は、航空隊にいたがパイロットという特質を生かして敗戦時、外地にいたが、戦闘機で脱出して日本に戻ってきた、という。

だが、私の父親は幸か不幸か後方勤務で外地に行っていない。したがって実戦部隊の悲惨さは経験していない。その両親が、父親の勤務先の同僚だった人物の家にたまたま寄った時に、その人物は戦地に行っていた、という事で話が出た。

その話だが、終戦で武装解除された後、従軍看護婦達が戦車を取り囲むように並ばされたのだという。そして、機銃掃射で全員、殺されたという。助けようにも武装解除の後なので、武器も持っていない。悔しかったがその現実を受け入れるしかなかった、そういう話をされたという。

戦争の中で、旧日本兵自体も中国人相手に理不尽な事をしてきた、だからお互い様、そういう事なのだが、なかなか人に話せる内容ではないので、黙っていた、そういう事をその人物に言われた、というその話をはからずも今日、母親が私にしてくれたのだ。

しかし、従軍看護婦は、言わば赤十字のような立場であり、兵士だって負傷して武器を持てなくなれば、敵味方問わずに救護するのが例え戦争であっても不文律。そういう心さえなくして、相手側にそこまでさせるような残虐な行為を本当に日本兵がしてきたのか、そういう事も本来であれば戦後の総括として日本はやるべきだった、いや、まだ遅くはないのだが…。

前のブログで南京大虐殺などと旧日本軍がとんでもないことをしたかのように中国側はあるいはその発信によって世界で思われているかも知れない裏側で、一方の中国兵もとんでもないことをしていた、そういう話があるのならば、やはり総括をした時に、中国兵や日本に帰り損なった朝鮮在住の人達の悲惨な実態も表に出すべきだったのだ。

全然関係ないインドシナ半島、あるいはシンガポールそれにインドネシアやフィリッピン等に旧日本兵が軍隊として進駐している事実があってさえ侵略戦争はしていないとか訳のわからないことを言っている自民党大臣のようなおかしなのがいるから、意義も意味も分からず、靖国に戦犯が合祀されたり戦争の総括も行われていない。

兵隊さん達の救護を目的として従軍した看護婦達は銃を取って戦ったわけではないのに、何故、中国兵の銃弾に倒れなければならなかったのか。その責任は誰にあるのか。

結局、昔、戦争に駆り出された人達は人に言えない経験が多い、そういう事で語り部として次の世代に伝えるべき経験を話してこなかったのではないだろうか。

だが、私でさえ、こういう話を、もう90をとっくに過ぎた母親から今日、聞いて知ると言うことは、まだまだ表に出ていない話がいっぱいあるのだろうと思う。総括をしなかったばかりに、貴重な話を埋もれさせていいのだろうか。
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ojioji

おっしゃるとおり、戦争中のことを語れる方が存命でいらっしゃるあいだに、貴重な体験を言葉に遺してほしいと思います。以前は、出征された方の多くは帰還してからも口を閉ざされたまま逝かれました。私の親戚や近所の方たちも殆ど語りませんでした。せいぜい戦後の抑留生活の苦労についてくらいですした。私の母は終戦時十一歳で、戦争中よりもむしろ戦後の貧しい時代の苦労話、復興話を聞かされました。
この20年くらいで、やっと戦争経験者の方が重い口を開いて語られるようになった感です。しかし、もう語れる方は限られています。
うーさんさまのお母様、お達者で何よりです。まさに戦争中に少女時代、戦争時代を送られたのですね。こうしてブログで読ませていただくと、歴史の教科書に書いていない歴史を知ることができます。ぜひ、いろいろな貴重なお話をまたご紹介ください。
by ojioji (2015-03-06 12:30) 

うーさん

>ojiojiさん
物事は検証しないと分からない事、見過ごしてしまう事多々あります。
もう東京大空襲の日がやってきますが、この事で私は長く、戦争では軍事関係者ではない人まで巻き込む爆撃、いわゆる無差別爆撃が許されると本当に信じていました。民主主義とか人権尊重の国と標榜しているアメリカにして、これですから世の中ご都合主義でしかありません。しかし、こういう事、検証して、私達は絶対に守る、そういう信念を持っていかないと、またご都合主義で流される国になってしまいそうです。
by うーさん (2015-03-06 14:56) 

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