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新聞ではわからない事実。高梨沙羅選手の場合… [報道]

女子ジャンプの高梨沙羅選手、今シーズンのワールドカップの総合優勝を先の大会で決めたが、本当にどれだけ凄い内容であったかは、新聞記事からは分からない、いや言葉だけ凄いようで、実は本当の実力は伝わっていない。

自身がとんだ目に遭った交通事故での報道が被害者、加害者が逆転し、さらに被害者なのに有罪にされてしまったように、警察発表、あるいは他社報道記事をそのまま転用など、悪い事でもおかしな報道が目立つ新聞記事。

売らんかな精神で引っ張るだけ引っ張ったり、いかにも金メダルあるいはメダルが取れる実力があるかのように期待ばかり高めた割には、結果が伴わずにファンから選手やチームに対するバッシングに変えてしまうような報道もスポーツ選手の戦績を伝える中にはある。つまり事実や実体がなかなか伝わらないのが映像抜きの報道だ。

さて、女子を含めてスキージャンプの場合、新聞記事では、いやテレビでも基本は順位がメインで、優勝者や上位日本選手の一回目、二回目の飛距離が付け加えられる程度だ。そうすると例えば高梨沙羅選手の場合であれば二位の選手と飛距離であまり差がない場合などもある。

二位の選手とあまり差がなければ圧倒的とか、凄い選手とかそういう形容詞はふさわしくないのでは、そう思うのが普通ではないだろうか。もちろん、勝ち続けること一つでも凄い選手とは言えるのだが。

しかし、実際の大会の映像を見れば、飛距離に差がない事の意味は他の選手達よりもスタートゲートが下だったり、着地点の傾斜が急激に起きてしまって足への衝撃が大きくなるジャンプ台(つまり本人の潜在意識として微妙に抑えるものが出ている)だったりすることがわかる。

スタート地点を他の選手よりも下げるという事はジャンプ台から与えられる初速が下がるという事であり、それだけ飛翔のエネルギーが小さくなり、遠くに飛ぶ力がなくなる。それでも他の選手よりも遠くに飛んでいるという事であり、着地点が起きていることなども含めて、こういう事は成績の数字には出てこないので新聞記事だけを見ても、高梨選手の凄さはわからない。

ジャンプには距離点と飛型点というのがあって、高梨選手の場合、飛型点が今一良くはないのだが、しかし、これも本当はおかしな点なのだと思う。
着地を含めた飛型点に定評のある選手であっても、その選手の想定よりも着地点近くで向かい風を受けて飛距離が伸びた場合、慌てて着地すると一足ランディングと言って両足を揃えた形で着地する。

これは人間の基本的な防衛機能が働いて一番安全な着地、すなわち一番足に衝撃の少ない着地姿勢になる、これが両足を揃えての着地になるのだが、スキージャンプは、テレマーク姿勢という足を前後に開いて着地する姿勢を要求し、これが高い飛型点の必須となっている。

だが、考えて欲しい。ジャンプ台から飛び出す時の速度は女子選手でも90キロ未満とは言え90キロに近い速度だ。これが風による揚力を受けて落下しながら前方に進むのだが、着地点では数キロなどという速度でないことは転倒した選手の状況でも分かる。

両足が揃っている場合には7,80キロの速度でも曲がったり、かなりスキー板をコントロールできるが、両足が前後している場合、速度に対するバランスを取るのが難しく、それも数十キロの速度だと片足を取られた場合の立ち直りどころか足を怪我しないよう板部分を持ち上げるのもスキー板が大きく重いジャンプ競技では大変なのだ。

テレマークの姿勢というのは両方の足の膝が同じ角度での着地になる事はほとんどなく、膝の角度が違う曲がった状態で着地する。それだけ膝に掛かる衝撃は大きいという事だ。しかもうまく力を逃がす姿勢どころかしっかり固定した状態で抵抗する力を持つこともできないというのがテレマーク姿勢なのだ。

スキージャンプで着地でのテレマーク姿勢を要求するFISの考えが分からないが選手の身体的負荷を考えた場合、本当に感動を与えるジャンプを選手に見せて欲しいならばせいぜい飛翔時の飛型と着地で転倒したかしないかに絞るべきなのだと思う。

同じサラでもワールドカップ発足時のアメリカのサラ選手や現在高梨選手に次ぐ順位にいるオーストリア選手という上位を経験した選手が足の故障で手術をしたり、出場できないというのも競技主催者が考えるべきものであり、日本の高梨選手ばかりが優勝するから、競技内容を変えようなどと馬鹿な事を考えるのがFISの役割ではないと思うのだが、どうだろうか。

だいたい欧米の長身選手に有利にと日本選手が活躍しだした途端にルールを変えて、それでも活躍する小柄な高梨選手がどれだけ凄いのかはFISの役員が一番分かっているべきもの、それをさらに、まだおかしな事をするなどスポーツに関わる人達とは思えないのだが、新聞・テレビでの報道ではこういう事、皆さんには伝わらない。

そして、こういう怪我と隣り合わせの中で高梨選手は抜群の成績を残している。それでも彼女は自身のジャンプで皆さんに感動を与えたいと、より高見を目指して頑張っている。

これを知れば応援せずにはいられない。


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ojioji

高梨沙羅選手、俄ファンで恐縮ですが、BSで二試合観戦して、書かれているすごさに感動しました。最初の観戦が、今季初めて表彰台を逃した試合だったので(^^;)、と云っても、あのときは他の選手がベスト飛行でしたよね、先日の試合は録画して翌朝見ることにしたところ、見事また圧勝(=^ω^=)、彼女がインタビューに英語で受け答えしているのを見て、よけい好きになりました。ところで、この競技の飛型点制度には昔から釈然としなくて、転倒しないでどこまで飛べたかだけで良い気がします。
by ojioji (2016-02-23 14:24) 

うーさん

>ojiojiさん
私も多忙な時にスケジュールを把握しきれずに録画もできない事がありますが、試合は本当に楽しみにしています。解説者や他国のコーチが女子に一人だけ男子の選手が混じっているようなものと言うくらいですから男子の選手の一流と遜色ないレベルということですね。たいしたものだと思います。飛型は結局、より遠くに飛ぶためには美しい飛行姿勢が必要だという事を考えれば、ojiojiさんの言われるように転倒したかしなかったか程度に留めた方が選手の故障を引き起こさずによいかと思います。ソチオリンピックで銀になったためにまだ現役を続けている葛西選手、実は飛型も金の選手と遜色なかったし距離も負けていなかったので、私の気持ちの中では金メダルです。本人は改めて金メダルにチャレンジする、という事ですから頭が下がりますね。
by うーさん (2016-02-24 00:23) 

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